“Civility best practice for nurse”と”Bullying prevention strategies for nurses”を参考にシビリティな体験談と仕草・作法を提案する

出典: www.nursingworld.org

現在私が科目履修生として通っている大学院でタイトルのような課題があった。主に看護分野でのCivilityおよびIncivility, Bullyingについてである。今回はこの課題について考察していきたい。

Civility, Incivility: A Concept Analysis

Civilityの概念分析は、Clark & Carnosso(2008)が最初の報告とされ、以後様々な研究者がCivilityの概念分析について報告している。
PubMedにおいて”civility””concept””analysis”のキーワードで検索した所、130の論文を検索することができた。(2023-11-04 時点)

ここでは、Civilityの定義として、Woodworth(2016)が報告した概念分析から定義されたものを使用する。定義は以下の通り。

Civility is defined as a complication of positive behaviors and attributes that influence communication, interpersonal, relationships, learning, and patient outcome.

Woodworth A.J., (2016). Promotion of Nursing Student Civility in Nursing Education: A Concept Analysis. Nursing Forum 51(3): 196-203.

僭越ながら、私なりに翻訳すると以下の通りとなった。

「Civilityは積極的な行動や態度によって複雑に構成され、コミュニケーションや対人関係、関係性、学び、そして患者へのアウトカムに影響を与える。」

…やばい、全然理解できない(汗)。授業ではCivilityはいい影響のような感じがしたのだが、定義ではそれが感じられない。しょうがないので、英文だけどちょっと読んでみることにした。

報告の中では、礼儀正しさや合理性、尊重する態度(Civility, 2014)の記載があった。また患者ケアの質を保証する最適な学習環境を確立するためにも、看護学生のシビリティは必要であるとされていた。

なんとなーくイメージは掴めた。ような気がする(笑)

では、Incivilityはそのまま逆のバージョンという理解で良いだろうか。

とりあえず、 PubMedで”incivility””concept””analysis”で検索したところ、14件のヒットがあったが、この中でもincivilityのconcept analysisについてはいくつかしか見られることができなかった。今回のincivilityの定義については以下のものを用いた。

Incivility is the perception of verbal or nonverbal actions that demean, dismiss or exclude an individual.

Patel SE, Chrisman M., (2020). Incivility through the continuum of nursing: A concept analysis. Nurse Forum. 2020;1-8. DOI: 10.1111/nuf.12425

Incivilityとは、ある個人を卑下したり、見下したり、排除したりする言動や非言語的言動を認識することのようである。

これはイメージがつきやすかった。これでCivilityとIncivilityについてイメージがついたので、次にシビリティな体験談と仕草・作法を提案する。

Civilityな体験談

私が学生だった頃、精神障害者の就労支援施設で実習を行なった。その施設では農作業を主に行なっており、そこでは中腰の姿勢で作業を行うなど、腰痛を訴える者が多かった。私たちグループは、腰痛体操を調べ、ポスターを作成し、実習最後の日に施設の利用者に対し腰痛体操の教室を開催した。

あまり知識もない私たちだったが、どうにか役に立ちたいと思い、仲間と考えて実行した。今思えば、そこまで大したものではなく、根本的な解決方法ではなかったが、とりあえず実行したのだった。

実習指導で厳しい評価などを受けてきたため、今回もある程度覚悟はしていたが、私が考えていた評価と異なった。

まず、施設管理者から感謝の言葉が届いたのだ。施設利用者のために色々と実行してくれて大変感謝しているとの事だった。これは実習担当教員以外からも届いたので、さらにびっくりした。また、施設管理者が将来の就職についても、ぜひここに来てほしいと話されていた。

悪く言えば「大人の対応」だったのかもしれない。しかし、その当時の私には大変心に残り、残りの学生生活で色々考えた結果、精神科看護を目指し就職したのだった。

この経験から、看護学生におけるCivilityは、自己肯定感や心理的安全性をあげ、学習意欲の向上だけでなく、希望をもって就職することにつながることを身をもって体験したのだ。

逆にIncivilityの対応を受けた施設では未だにその内容を覚えていて、その領域についても苦手意識をもっている。

Civilityな仕草・作法の提案

ANAの”Civility Best Practice for Nurses”は以下の15の提案がある。

Civility Best Practices for Nurses
It’s up to all of us
Nurse should model respect and a professional demeanor to help reinforce civility and positive norms. Employers must support and facilitate this process.

看護師のための礼節ベストプラクティス
それは私たち全員にかかっている
看護師は、礼節と積極的な規範を強化するために、敬意とプロフェッショナルな態度の模範となるべきである。雇用主はこのプロセスを支援し、促進しなければならない。
No.Best Practices翻訳
1Use clear communication both verbally and nonverbally.口頭と非言語の両方で明確なコミュニケーションをとる。
2Treat others with dignity, collegiality, and kindness.品位、協調性、優しさを持って他者に接する。
3Consider how personal words and actions impact others.個人の言動が他人にどのような影響を与えるかを考える。
4Avoid gossip and spreading rumors.ゴシップや噂の流布を避ける。
5Rely on facts and not conjecture.憶測ではなく、事実に頼ること。
6Collaborate and share information where appropriate.必要に応じて協力し、情報を共有する。
7Offer assistance when needed but accept refusal gracefully.必要なときには援助を申し出るが、断るときは潔く受け入れる。
8Take personal responsibility for one’s own actions.自分自身の行動に責任を持つ。
9Recognize that abuse of power or authority is never acceptable.権力や権威の乱用は決して許されないことを認識する。
10Speak directly to the person with whom one has an issue.問題を抱えた相手と直接話す。
11Demonstrate openness to other points of view, experiences, and ideas.他の視点、経験、考えに対してオープンであることを示す。
12Be polite and respectful, and apologize when indicated.礼儀正しく、敬意を払い、指示があれば謝罪する。
13Encourage, support, and mentor others.他人を励まし、支え、指導する。
14Listen to others with interest and respect.関心と敬意をもって他人の話に耳を傾ける。
15Above all, aspire to uphold the professional Code of Ethics.何よりも、プロとしての倫理規定を守ることを志すこと。
ANA: www.nursingworld.org

ANAの”Bullying Prevention Strategies for Nurses”は以下の9の提案がある。

Bullying Prevention Strategies for Nurses
It’s up to all of us
Nurse must establish and promote healthy interpersonal relationships at the workplace. Employers must support and facilitate this process.

看護師のためのいじめ防止策
私たち全員にかかっている
看護師は職場で健全な対人関係を築き、促進しなければなりません。雇用主はこのプロセスを支援し、促進しなければならない。
No.Prevention Bullying翻訳
1Become familiar with employer bullying prevention policies.雇用主のいじめ防止方針を熟知する。
2Establish an agreed-upon code word to seek support when feeding threatened.脅威を感じたときに支援を求めるための合意された暗号語を設定する。
3Practice using response to prepare to deflect incivility or bullying.軽率な言動やいじめをかわすための対応策を練習する。
4Address perpetrators promptly and privately, when possible.可能であれば、加害者に迅速かつ個人的に対処する。
5Report the event through appropriate channels.適切なルートで報告すること。
6Keep a detailed written account of the incident(s) and their frequency in case it becomes a pattern.万が一、それがパターン化した場合に備えて、出来事とその頻度を詳細に記録しておくこと。
7Consider letting the person doing the bullying know that their actions are not consistent with established policies.いじめを行っている人に、その行為が確立された方針と一致していないことを知らせることを検討する。
8Provide peer support or suggest access to a similar support system.ピアサポートを提供するか、同様のサポートシステムへのアクセスを提案する。
9Recognize one’s own actions taken and not taken as they relate to incivility and bullying.非礼やいじめに関連する、自分自身の取った行動と取らなかった行動を認識する。
ANA: www.nursingworld.org

一方で、教授から”江戸しぐさ”という言葉を教えてもらった。NPO法人 日本のこころ・江戸しぐさによると、江戸しぐさとは以下の通りである。

(江戸しぐさとは)江戸商人のリーダーたちが築き上げた、よりよく生きるルールのようなもの(略)その基本は思いやりの心(惻隠の情)を持って、みんなが仲良く、平和の下で共に生きるために争い事を少なくし、人に対する言葉遣いやしぐさにも気を配るというもの

NPO法人 日本のこころ・江戸しぐさ

Civilityと江戸しぐさは非常に良く似ているようにみえる。また日本のこのような文化は海外からも注目されているようである。今回私が提案するCivilityのBest practiceは以下の通りとしたい。

No.Best Practice Recommendations翻訳
1Encourage greetings and talk to each other at work.あいさつの励行、職場では声を掛け合う。
2For example, in the case of a collision, the object that was hit will also say, “It was careless of me too”.例えばぶつかったりした場合、ぶつけられた物も「こちらこそうっかりしてて」という。
3Anticipate the opponent’s movements and act in a way that does not interfere with them.相手の動きを予測して、支障を及ぼさないように行動する。

”1”によってもたらされる効果としては、相手の存在を認める効果が期待され、”2”については刺々しさがなくなり、いさかいを防ぐ効果が期待されます。これは江戸しぐさでいう「うかつあやまり」に該当します。また”3”については、相手への気遣いが効果として期待されるため、これらの実践もCivilityが期待できるものと考えた。

まとめ

看護学生におけるCIvilityは、最終的には患者ケアに良い影響を及ぼすとされている。就職後の看護倫理規定を守ることも大切だが、学生時代からCivilityの影響について”科学的に”考える必要があると思う。Civilityの問題について、単なる”作法”の問題として捉えるのではなく、心理的安全性や自己肯定感、その後の患者outcomeにつながることなど、科学として今後ますます看護教育に取り入れられることを期待したいと思う。


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